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YouTube解説2026年10月20日

マイクロソフトもNVIDIA(エヌビディア)も、なぜシンガポールの隣に続々集結?足りないのは電気と土地、AIデータセンター「南下」の真の狙いは?

マレーシアのジョホール州では、ここ数年、窓の少ない巨大な建物が次々と建っています。AIのデータセンターです。アメリカの大手が、なぜシンガポールのすぐ隣にこれほどのお金を投じるのか? 明日の株価ではなく、5年後・10年後の米国株の目で考えます。

この記事の結論

結論を先に3つお伝えします。1つ目。アジアのデータセンターの中心だったシンガポールは、電気と土地が足りず、新しいデータセンターを厳しく絞ってきました。その間に、橋の向こうのマレーシア・ジョホール州が、シンガポールと並ぶ規模まで育ちました。

2つ目。マイクロソフト、グーグル、オラクル、アマゾン。アメリカの大手が、そろってマレーシアに巨額を投じています。理由は電気と土地です。AIの陣取り合戦は、半導体だけでなく、電気と土地を押さえる競争になっています。

3つ目。5年で見れば、この南下は続く可能性が高いと僕は見ています。10年で見るべきは、マレーシアの電気と水がこの勢いについていけるのか? そして、巨額の投資をAIの売上で回収できるのか? この2つです。

シンガポールは、なぜ新設を絞ったのか?

シンガポールは、長くアジアのデータセンターの中心でした。ところが2019年、新しいデータセンターの建設を事実上止めました。2020年には、データセンターが国全体の電気のおよそ7%を使うまでになっていました。国の広さは、東京23区より少し大きいくらいしかありません。

2022年に再開しましたが、条件つきです。最初の募集で認められたのは合わせて80メガワットほどで、その中の1社がマイクロソフトでした。今年8月の2回目の募集では、新たに200メガワットが割り当てられ、選ばれた4社にはアメリカのエクイニクスとデジタル・リアルティも入っています。

ただし、場所はジュロン島という工業用の島に限られ、電気の半分以上を環境に配慮したエネルギーでまかなうことが条件です。シンガポールは「好きなだけ建てられる場所」から、「選ばれた会社だけが条件を守って建てる場所」に変わりました。

橋の向こう、ジョホールに集まる

あふれた需要が向かった先が、橋の向こうのジョホールです。不動産の調査会社ナイト・フランクの7月の報告では、今年前半の時点で動いているデータセンターの規模は、ジョホールが1,110メガワット、シンガポールが1,118メガワット。ほぼ並びました。データセンターの規模は調査会社ごとに数え方が違うため、ここでは同じ報告の中で2つの地域を比べています。

マレーシアの電力会社TNBは、データセンター59件と、合わせて8.3ギガワットの電気を届ける契約を結んでいます。そのうち68%がジョホールで、件数のおよそ7割がアメリカとシンガポールから来た案件です。

アメリカの大手の動きも見ておきます。マイクロソフトはマレーシアに22億ドルを投じると発表し、ジョホールバルに2つ目の拠点をつくる計画も出しています。グーグルはおよそ20億ドル、オラクルは65億ドルを超える投資を発表しました。アマゾンのAWSは2038年までにおよそ62億ドルを投じる計画です。エヌビディアはマレーシアのYTLと組み、去年10月、ジョホールのクライで最新のAI半導体を並べたデータセンターが動き始めました。すべてがジョホールではありませんが、そろって数十億ドル単位で賭けている。ここが大事なところです。

本当に買っているのは「時間」

なぜシンガポールの隣なのか? 僕は理由が3つあると見ています。1つ目は、電気と土地があること。2つ目は、アジアの事業の拠点が集まるシンガポールに近く、お客さんから遠くならないこと。

3つ目は時間です。データセンターは、建物を建てるのにも電気を引くのにも何年もかかります。今押さえておかないと、あとからは手に入らない。アメリカの大手が巨額の投資で本当に買っているのは、「時間」なんです。

マイクロソフトの財務の責任者は、7月の決算で「お客さんの需要は、使える能力を上回り続けている」と話しています。足りないのは半導体ではなく、電気と、電気を引ける土地だった。僕は、ここがAIの成長の上限を決める場所になったと見ています。

マレーシアにも、限りはある

ただし、マレーシアにも限りがあります。今年2月、アンワル首相は議会で、AIや高い技術に関係しない新しいデータセンターの申請は止めていると話しました。理由は電気と水です。ジョホール州も、データセンター向けにふつうより高い水の料金を設けました。

マレーシア政府は、国の電気の需要のピークが、今年の21.3ギガワットから2035年には33.5ギガワットまで増えると見ています。シンガポールで起きたことが、何年か遅れてマレーシアでも起き始めている。僕はそう見ています。

5年後・10年後、強気と弱気

マイクロソフトは、4月から6月の3か月だけで設備投資に410億ドルを使い、7月から9月は500億ドルを超える見込みです。見るべきことは2つ。電気と土地を早く押さえた会社がAIの注文を受けられること。そして、そのお金を本当に回収できるのか? ということです。

5年後、2031年ごろは、南下は続く可能性が高いと僕は見ています。TNBが契約した8.3ギガワットのうち、完成した案件の分は4.5ギガワットほどで、残りはこれから動き始める分です。10年後、2036年ごろは分かりません。データセンターと人々の暮らしのどちらを優先するのか? という問いは強くなるかもしれません。投資を回収できるかは、アメリカの大手の決算が答えを出します。

強気の見方は、需要が能力を上回り続けていること、電気と土地を早く押さえた会社が注文を受けられること、データセンターを貸すエクイニクスやデジタル・リアルティは、すでに持つ場所の値打ちが上がりやすいことです。弱気の見方は、マレーシアも新設を絞り始めたこと、投資が先に進み売上が追いつかないおそれ、電気や水の値段が上がれば利益が削られることです。

僕の見立てが崩れるのは、アメリカの大手がそろって設備投資を減らし始めたとき、マレーシアがAIのデータセンターまで新設を止めたとき、建てたデータセンターが埋まらなくなったときです。

まとめ

シンガポールは電気と土地が足りず、データセンターを絞りました。その分が橋を渡り、ジョホールはシンガポールと並ぶ規模になりました。アメリカの大手が買っているのは、電気と土地と、時間です。

どれだけ投資したかではなく、その投資がどれだけの売上と利益になって返ってくるのか? アメリカの大手を5年後、10年後の目で見るときに、いちばん大事なのはそこだと僕は考えています。

動画では、ジョホールバルからシンガポールへ橋を渡りながら、この南下の現場の空気とあわせてお話ししています。ぜひ動画もご覧ください。より深く分かっていただけると思います。

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