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YouTube解説2026年10月21日

Grab(グラブ)は終わるビジネスか、一生に一度の好機か?株価は1年で半分、東南アジアのスーパーアプリの5年後・10年後

車を呼ぶ、食事を届けてもらう、お店で支払う、お金を借りる。東南アジアでは、これが緑色の1つのアプリでできます。そのGrabの株価が、1年でおよそ半分になりました。明日の株価ではなく、5年後・10年後のGrabがどうなっているのか? シンガポールから考えます。

この記事の結論

結論を先に3つお伝えします。1つ目。Grabの株価は、1年前の6ドル台から、10月12日には3ドル15セントと、およそ半分になりました。でも、事業そのものは、売上も本業のもうけも伸び続けています。

2つ目。株価が下がった理由は、事業が壊れたからではありません。燃料の高騰、インドネシアの規制、そして大きな買収。市場が疑っているのは、成長ではなく、成長にかかる費用とリスクです。

3つ目。5年で見るべきは、お金を貸す金融の事業が、本当に利益を生むようになるかどうかです。10年で見るべきは、東南アジアの暮らしの入口を、Grabが握り続けられるかどうかです。

Grabは、東南アジアの「スーパーアプリ」

Grabは2012年に創業し、今は東南アジアの8つの国、900を超える都市で事業をしています。本社はシンガポールで、アメリカのナスダックに上場しています。2018年には、アメリカのウーバーから東南アジアの事業を買い取りました。

事業は大きく3つです。食事や日用品を届ける「配達」、車やバイクを呼ぶ「移動」、そして支払いや融資、デジタル銀行の「金融」。料理の宅配と、タクシーのアプリと、ネットの銀行が、1つのアプリに入っているようなものです。

1か月に1回以上Grabで支払いをした人は、4月から6月で5,390万人と過去最高でした。毎日の食事、毎日の移動、毎日のお金。暮らしの入口を握っていることが、Grabのいちばんの強みです。

事業は伸びている

8月4日に発表された4月から6月の決算では、売上が9億9,700万ドルで、前の年より22%増えました。本業でどれだけ稼いだかを示す調整後EBITDAは1億6,800万ドルで、54%増。18四半期続けての増加です。

事業ごとの売上は、配達が21%増、移動が12%増、金融が59%増。会社は今年1年の売上の見通しを、41億ドルから41億5,000万ドルに引き上げました。純現金は54億ドルあり、新たに7億5,000万ドルの自社株買いも決めています。数字だけを見れば、壊れている会社ではありません。

なぜ株価は半分になったのか?

僕は、理由は3つあると見ています。1つ目は燃料の高騰です。Grabはドライバーの収入を支えるために支援を増やし、ドライバーや利用者への販促の費用は、配車と配達の取扱高の10.9%に上がりました。売上が伸びても、その分、利益が削られます。

2つ目はインドネシアの規制です。東南アジアでいちばん人口の多いこの国で、7月1日から、バイクの配車でアプリの会社が受け取る手数料が、20%から8%に下がりました。ドライバーの取り分を増やすための、大統領の方針です。

3つ目は大きな買収です。9月15日、Grabは後払いのサービスを手がけるアトームの株の6割を、14億9,000万ドルの現金で取得すると発表しました。残りの4割も、2年ほどあとに取得する約束です。株価は9月18日に一時2ドル74セントと、2023年5月以来の安値をつけました。

そうした中、創業者でCEOのアンソニー・タンさんが、自社の株をおよそ3,000万ドル分購入したと報じられました。僕は経営者の言葉より行動を見るようにしています。これは1つの意思表示です。ただし、経営者が購入したからといって、株価が上がる保証はありません。

金融は、Grabの次のエンジン

なぜGrabは、株価を下げてまで、お金を貸す事業に賭けるのか? 理由は、毎日集まる情報です。どのドライバーが、どれだけ働いているのか? どのお店が、どれだけ売れているのか? それがアプリに毎日記録されていきます。この情報を使えば、銀行が貸せなかった人にもお金を貸せます。2025年にGrabでお金を借りたドライバーの68%は、正式な融資を受けるのが初めてでした。

融資の残高は6月末で23億ドルと、デジタル銀行を子会社にした分も含めて前の年のおよそ3倍です。会社は、アトームを加えて、2028年に金融の事業の調整後EBITDAを5億ドルにする目標を掲げています。ただし、これは会社の目標であって、事実ではありません。今の金融の事業は、まだ1,500万ドルの赤字です。そして、お金を貸す事業には、景気が悪くなったときの貸し倒れのリスクがつきものです。

5年後・10年後のGrab

5年後、2031年ごろの分かれ目は、金融の事業が本当に利益を生むようになるかどうかです。配達と移動で集めた情報を、お金を貸す力に変えられれば、Grabは配車の会社から、東南アジアの暮らしの金融の会社に変わります。逆に、貸し倒れが増えれば、買収は重い荷物になります。

10年後、2036年ごろは分かりません。分かれ目は2つあります。1つは国との関係です。暮らしの入口になればなるほど、政府は口を出してきます。8つの国で事業をする以上、この重さは消えません。もう1つは競争です。インドネシアのGoToとの合併の話は何年も前から報じられていますが、決まったという発表は今のところ確認できていません。値下げや販促の争いが続けば、販促の費用は下がりにくいままです。

強気の見方と弱気の見方

強気の見方。5,390万人が毎月使う暮らしの入口を握り、本業のもうけは18四半期続けて増え、純現金は54億ドルあります。創業者が自社の株を購入し、会社も自社株買いを続けています。

弱気の見方。燃料の高騰と販促の費用が利益を削っています。国の規制は、これからも強まるかもしれません。アトームの買収で、お金を貸す事業のリスクは大きくなります。

僕の見立てが崩れるのは、金融の事業で貸し倒れが増えて赤字が広がり続けたとき、手数料の上限のような規制が車の配車や配達にも広がったとき、そして販促の費用を増やさないと利用者や取扱高が伸びなくなったときです。決算のたびに、この3つを確かめていきます。

まとめ

株価が半分になったことは、事業が半分になったことではありません。でも、それだけで一生に一度の好機と決めることもできません。Grabを5年後、10年後の目で見るときにいちばん大事なのは、伸びた売上が、どれだけ利益として残るのか? そこだと僕は考えています。

動画では、シンガポールの街からGrabの3つの事業と、株価が下がった理由をもう少し丁寧にお話ししています。あわせてご覧いただくと、より深く分かると思います。

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