パランティアは、何をしている会社なのでしょうか? AIのモデルはつくっていないのに、11月2日の決算で売上は前の年より96%増えました。CEOの言葉と決算の数字から、5年後・10年後のパランティアを考えます。
この記事の結論
結論を先に3つお伝えします。1つ目。パランティアは、AIをつくる会社ではなく、AIを現場で動かす会社です。
2つ目。決算では伸びがさらに速まり、今年の見通しも引き上げました。
3つ目。分かれ目は、この伸びに見合う値段がつき続けるかどうかです。最後に、パランティアの10年を見る3つの物差しもお伝えします。
パランティアは、何をしている会社?
始まりは、アレックス・カープ氏とピーター・ティール氏の出会いです。2人はスタンフォード大学の法科大学院で一緒に学びました。カープ氏はその後ドイツで社会理論の博士号を取っています。技術者ではなく、哲学を学んだ人がCEOになったのです。
2003年、2人はパランティアを立ち上げました。ティール氏が共同で創業したペイパルの、不正を見つける仕組みを国の安全に生かす考えでした。シリコンバレーの有力な投資会社には相手にされず、初期にお金を出したのはCIAの投資部門、イン・キューテルだったと伝えられています。
バラバラの場所にある大量のデータを1か所につなぎ、テロのネットワークや不正を見つけ出す。これが原点です。今は同じ仕組みを、工場や病院、銀行などの企業にも売っています。売っているのは、AIを会社の本物のデータと仕事につなぐ仕組みです。
「AIの売り方は、何かが完全に間違っている」
7月1日、カープCEOはアメリカの経済番組で「AIのモデルは、無責任なほど売り込まれすぎている」と言い切りました。矛先は、使った量に応じてお金を取るAIの会社の売り方です。経営者からは「価値を生まないものに、お金を払っている」という声が出ているとも語りました。
カープCEOの立場は、モデルだけでは会社の数字は変わらない、というものです。現場のデータと判断にAIをつなぎ込んで、初めて価値が出る。だからパランティアは、技術者をお客さんの現場に送り込みます。
8月の株主への手紙では、さらに踏み込みました。自分の会社のデータが、ほかの会社のAIの学習に使われてはいけない。国も企業も、AIを自分の手で握るべきだ。これが「AIの主権」という考え方です。
一度落ちた伸びが、AIで再び加速
パランティアの売上の伸びは、一度落ちていました。2021年は41%、2022年は24%、2023年は17%です。
そこで2023年に出したのが、AIの仕組み、AIPです。お客さんの所で数日のうちにAIの使い道を形にしてみせる集中講座も始めました。すると伸びは2024年に29%、2025年に56%と、もう一度速くなりました。
去年10月には、エヌビディアと提携を発表しています。AIの頭脳の部品を握るジェンスン・フアン氏が、現場で動かす側のカープ氏と手を組んだのです。
7月から9月、売上は96%増
7月から9月の売上は23億1,300万ドルで、前の年より96%増えました。3か月で20億ドルを超えたのは初めてで、4月から6月の93%から、伸びはさらに速くなっています。
アメリカの企業向けは9億8,400万ドルで148%増、政府向けは9億5,300万ドルで、こちらもほぼ2倍です。そして会社の歴史で初めて、企業向けが政府向けを上回りました。国の仕事から始まった会社で、主役が入れ替わったのです。
売上の伸び率と本業の利益の率を足した「ルール・オブ・40」という物差しでは、40を超えれば優れた会社とされる中、パランティアは158でした。本業の利益は10億8,500万ドルで、売上に対する率は47%です。会社は今年の売上の見通しを、8月時点の81億5,000万ドルほどから、85億3,000万ドルから85億3,400万ドルへ引き上げました。前の年より約91%増です。
国を訴えた会社
パランティアには、相手が国でも引かない顔もあります。2016年、アメリカ陸軍が情報分析の仕組みを選ぶときに市販の製品を比べなかったとして、陸軍を訴えました。裁判所はパランティアの言い分を認め、2018年の上の裁判所でも判断は変わりませんでした。2019年、パランティアは陸軍の大きな契約を勝ち取っています。
また、創業者たちは特別な株で、議決権の半分近くを握っています。長い目で賭けを続けられる強みであり、止める人がいない弱みでもあります。
5年後・10年後、パランティアは勝ち残るか?
AIのお金は、電力から半導体、クラウド、モデル、アプリへと8つの層を流れます。パランティアがいるのは、いちばん上のアプリの層です。最後に最も大きくなり、最も残酷な層でもあります。
大きなクラウドの会社はAIの需要を自分の所に集めたい。パランティアは逆に、国や企業ごとにAIを分けて持たせたい。この流れが続くほど、AIを現場で動かす会社の出番は増える。僕はそう見ています。
ただ、時価総額は2022年の終わりから約34倍になりました。伸びる会社かどうかと、値段が見合うかどうかは、別の問いです。見ておきたい物差しは3つです。アメリカの企業向けの伸びが高い水準を保てるか? クラウドの大手の仕組みだけで、現場のAIが十分に動くようにならないか? 政府の予算が削られても、政府向けの契約が細らないか? 1つ目が2四半期続けて大きく落ちたら、見立ては揺らぎます。
強気の見方と弱気の見方
強気の見方はこうです。この3か月に100万ドル以上の契約を212件結び、アメリカの企業向けで、まだ売上になっていない契約が65億ドルある。AIの主権を求める国と企業が増えるほど、注文はさらに増える。
弱気の見方はこうです。この3か月に結んだ契約の総額は約29億ドルで、伸びは6%にとどまった。売上の8割超がアメリカで、海外はまだ小さい。株の値段が、何年も先の伸びまで先取りしている。
まとめ
パランティアは、AIをつくらず、AIを現場で動かす会社です。いちばんお伝えしたいのは、会社の伸びと値段を分けて見ることです。
動画では、カープCEOをめぐる人の物語や、決算の日に語った言葉を、さらに詳しくお話ししています。動画を見ていただくと、より深く分かると思います。


