インテルの株価が、1日で約29%下がりました。52年ぶりの大きな下げです。ところが前の日の決算は、データセンターとAI向けが78%増と、悪くない中身でした。なぜここまで売られたのか、そして5年後・10年後のインテルはどうなっているのでしょうか?
この記事の結論
結論を先に3つお伝えします。1つ目。売られたのは今の数字ではなく、次の半年の見通しです。
2つ目。データセンターのCPUは、売れないのではなく、つくりきれていません。
3つ目。10年の分かれ目は、AIエージェントのCPUと、工場の外のお客さんです。最後に、インテルの10年を見る3つの物差しもお伝えします。
1日で29%、52年ぶりの下げ
インテルの株価は、今年4月、2000年のITバブルの最高値を26年ぶりに超えました。9月の終わりには120ドル台まで上がり、10月の半ばには90ドル前後まで下げ、決算の日の終わり値は92ドルでした。
そして10月30日、終わり値は65ドル76セント。1日で約29%の下げで、1974年以来の大きさです。9月の高値から見ると、ほぼ半分になりました。
この日は、ほかの半導体の株も一緒に売られました。アメリカでは「インテルの決算が、AIの株の売りに火をつけた」という声が目立ち、評価を引き下げるアナリストも相次ぎました。
決算の数字は、悪くなかった
7月から9月の売上は165億ドルで、前の年より21%伸びました。データセンターとAI向けは73億ドルで、78%の伸びです。デイビッド・ジンズナーCFOは「データセンターの売上は、この15年でいちばん強い伸び」と話しています。
サーバー用のCPUは、台数が10%増え、1台あたりの値段は54%上がりました。高い製品が、よく売れたのです。粗利の率は43.0%で、前の年の38.2%から上がりました。売上も、粗利の率も、1株あたりの利益も、会社の見込みを上回っています。
それでも大きく下げた3つの理由
1つ目は、次の3か月の見通しです。10月から12月の売上は150億から160億ドルの見込みで、7月から9月より少なくなります。粗利の率も、38%前後に下がる見込みです。工場は売る量が減っても費用があまり変わらないので、売上が減ると利益の率は一気に下がります。
2つ目は、パソコンです。今もインテルでいちばん大きな事業ですが、売上は81億ドルで5%減り、台数は14%減りました。原因はメモリの値上がりで、パソコンが高くなり、買う人が減りました。不振は少なくとも来年の前半まで続く見通しで、インテルは来年のパソコンの台数が約1割減る前提で計画しています。
3つ目は、データセンターのCPUが足りないことです。リップブー・タンCEOは、まずサーバー用のCPU、ジーオンの供給を増やすと話しています。注文はあるのに部品の基板が足りず、さらにイスラエルの工場の事故で生産が長く止まりました。10月から12月の売上は、これで約3億ドル減る見込みです。
工場の部門は、まだ赤字
もう一つ重くのしかかったのが、工場のお金です。工場の部門、インテル・ファウンドリーの売上は67億ドルでしたが、そのうち63億ドルはインテル自身の製品をつくった分です。外のお客さんからは約4億ドルで、それも1回限りの契約によるものでした。
そして、この3か月で19億ドルの赤字です。前の年の23億ドルより縮んだものの、赤字は続いています。今年の設備投資は約200億ドルで、来年はさらに増やす計画です。来年の手元に残る現金は、プラスにならない見込みだと説明されています。
インテルは8月に1株95ドルで新しい株を売り出し、230億ドルを集めました。株の数は今年の初めより約6%増え、今の株価はその95ドルを大きく下回っています。
AIエージェントの時代、CPUがまた主役に?
一方で、見ておきたい数字もあります。タンCEOは、サーバー用のCPUの市場が、5年で400億ドルから2,000億ドルを超えると見込んでいます。
理由は、AIエージェントです。AIエージェントは、考えるだけでなく、調べ物や確認、データの出し入れを何度もくり返します。その段取りを受け持つのがCPUです。インテルは、業界のサーバー用のCPUの台数が、今年も来年も約30%伸びると見ています。オラクルとは、クラウドでジーオンを使う何年にもわたる協業を発表しました。
ただし、エヌビディアは自社のCPU、ベラを売り始め、AMDとも競っています。CPUの需要が戻っても、インテルが取れるとは限りません。
5年後・10年後のインテル
AIのお金は、電力から半導体、クラウド、モデル、アプリへと、8つの層を流れます。インテルが戦う半導体の層は、今いちばん確実に稼いでいる層で、5年後も大きく稼ぐと僕は見ています。ただ、その中心はエヌビディアとTSMCで、インテルは挑戦者です。
それでもインテルには、アメリカの中で最先端のCPUを自分の工場でつくれる、という他社に無いものがあります。アメリカ政府は、去年からインテルの株の約1割を持つ株主です。次の製造技術「14A」は2028年の生産開始を目指し、複数のお客さんの候補と話を進めているそうですが、名前は明かされていません。
強気な人たちは、AIエージェントのCPUで稼ぎ、アメリカの中の2つ目の最先端の工場になる姿を描いています。弱気な人たちは、工場のお金が重すぎて、また株を売り、設計の会社に戻る道を選ぶと見ています。
10年を見る3つの物差し
1つ目。データセンターの売上が、供給の制約が解けたあとも伸び続けるか?
2つ目。工場の部門の赤字が縮み、外のお客さんの売上が積み上がるか?
3つ目。株を新しく売らずに、工場のお金をまかなえるか?
逆に、供給が増えても伸びが鈍ったとき、14Aの大口のお客さんが来年の前半を過ぎても決まらないとき、工場の赤字が広がってまた株を売ったときは、強気の見立てが崩れる合図になります。
まとめ
1日で約29%、52年ぶりの下げでした。それでも、データセンターとAI向けは15年で最強の伸びです。売られたのは、パソコンの不振と、次の半年の見通しと、工場のお金でした。
大事なのは、株価の下げの大きさではなく、つくりきれていないCPUと、工場の外のお客さんを見ることです。次の決算でも、まず見るのはデータセンターの伸びと、工場の部門の赤字です。
動画では、株価の流れや強気と弱気の見方を、さらに詳しくお話ししています。あわせて見ていただくと、インテルの10年がより深く分かると思います。


