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YouTube解説2026年10月30日

マイクロソフト(Microsoft)、社員の4分の1・6万人に退職を募る? 決算はAzure48%増、AI巨額投資は回収できるか? 5年後・10年後 アメリカ・ハワイから

10月26日、マイクロソフトが社員のおよそ4分の1、約6万人に退職を募ると報じられました。売上も利益も伸びている会社が、なぜ人を減らし、AIの設備に賭けるのでしょうか? 10月28日の決算を材料に、5年後・10年後のマイクロソフトを考えます。

この記事の結論

結論を先に3つお伝えします。1つ目。本業は強く、問題は稼ぎより、AIの設備にかかるお金です。

2つ目。クラウドのアジュールの伸びは加速し、次の3か月もさらに伸びる見込みです。

3つ目。僕は、マイクロソフトをAIの勝者ではなく、AIの「関所」と見ています。最後に、マイクロソフトの10年を見るための3つの物差しもお伝えします。

10月26日、約6万人に「辞めませんか」

10月26日、マイクロソフトは新しい退職の申し出を社内に伝えました。対象はアメリカ、カナダ、イギリス、インドの約6万人で、社員のおよそ4分の1にあたります。一部の幹部まで含め、年齢も勤続年数も問わないとされ、条件はふだんの退職金と同じくらいと報じられています。

実は今年の春にも、長く勤めた人に早期退職を募っていて、対象者の約3割が応じたとされています。社員の数は前の年より2%減りました。会社は、解雇の代わりではなく、解雇の可能性も残ると説明しています。アメリカでは「AIが仕事を奪い始めた」と受け止める声も目立ちます。

売上も利益も伸びているのに?

ところが、本業は弱っていません。7月から9月の売上は923億ドルで前の年より19%増、営業利益は459億ドルで21%増です。

稼ぎ頭のアジュールは48%伸び、4月から6月の42%からさらに加速しました。3か月の売上は332億ドルで、1年に直すと1,300億ドルを超えます。AIの助手コパイロットの有料の席も、6月の時点で3,000万を超えています。

では、なぜ人を減らすのでしょうか? 会社はAIが理由ではないと説明しています。ただ、同じ時期に、もう一つの数字が大きく膨らんでいます。

お金の行き先は、AIの設備

それが設備投資です。7月から9月だけで、リースを含めて452億ドルを使いました。前の年の同じ時期より30%多く、その約4分の3はAIの計算に使う半導体など、寿命の短い設備です。

設備は買った年ではなく、何年かに分けて費用になります。これを減価償却といいます。減価償却などの費用は3か月で117億ドル、前の年より44%増えました。いま買った半導体の費用が、これから毎年の利益に降りてきます。

AIとクラウドの部門では、売上が25%伸びた一方、売上にかかる原価は35%増えています。本業で稼いだ現金は3か月で580億ドルありましたが、設備に回したあと手元に残ったのは186億ドルです。人の費用を抑えながら、設備の費用が増えていく。売上が伸びても、利益の率は伸びにくい形です。

縮む事業と、OpenAIとの距離

アメリカではWindowsへの不満も目立ちます。あらゆる所にコパイロットが入り、頼んでいない機能が増え、古いパソコンでは新しいWindowsが使えない。実際、Windowsと端末の売上は22%減り、Xboxも2%減りました。伸びる事業と縮む事業を、同時に抱えています。

もう一つがOpenAIとの関係です。今年4月、OpenAIのクラウドを独占する契約が終わりました。それでもOpenAIはアジュールに2,500億ドルを使うと約束していて、マイクロソフトの受注残の3分の1以上がOpenAI一社の分です。最大の味方であり、最大の偏りでもあります。

マイクロソフトは、AIの「関所」

僕は、この会社をAIの「関所」だと見ています。どのAIのモデルが勝っても、企業がそれを動かす場所で通行料を取る会社です。創業間もないころ、マイクロソフトはパソコンではなく、その上で動くMS-DOSを取りました。AIでも同じ形をねらっています。

大企業が新しい会社と取引を始めるには、稟議に半年から1年半かかることもあります。マイクロソフトなら、今の契約に足すだけで済みます。社員の名前と権限も、もともとマイクロソフトが管理しています。家ではクロードを使い、会社ではマイクロソフト。こういう使い分けが、現場では実際に起きています。

10月28日の決算で見えた答え

アジュールの48%は、会社が7月に示した約45%の見込みを上回りました。受注残は6,770億ドルで前の年より73%増えましたが、6月末からはほぼ横ばいです。クラウドの粗利率は66%で、前の四半期の65%から戻し、下げ止まりの形です。

10月から12月について、フッドCFOはアジュールの伸びを49%から50%と見込みました。一方で、設備投資は3か月で500億ドルを超え、クラウドの粗利率は65%ほど、Windowsと端末の売上は30%台半ばの減少を見込んでいます。伸びる所はさらに伸び、縮む所はさらに縮む見通しです。

5年後・10年後、AIの投資は回収できるか?

僕は、マイクロソフトは爆発力を捨てて、確実性を買った会社だと見ています。いちばん速い会社ではなく、いちばん崩れにくい会社です。10年後も、企業がAIを使うときの主な入口の一つであり続けるでしょう。5年以内に売上に効いてくるのは、AIが代わりに働くエージェントです。ただ、利益の率は伸びないまま、引き分けが続く形がいちばんありそうです。

強気な人たちは、需要が供給を上回り、つくった設備がすぐ売上になっていること、コパイロットの有料の席が半年で倍に増えたこと、自社の半導体とAIで計算のコストを下げていることを挙げます。

弱気な人たちは、AIを載せたクラウドほど利益の率が下がっていること、受注残がOpenAI一社に偏っていること、WindowsとXboxが縮んでいることを挙げます。強気の見立てが崩れるのは、クラウドの利益の率がはっきり下がり始めたとき、OpenAIがアジュールでの支出を大きく縮めたとき、AIの導入が電気のように簡単になり「関所」が要らなくなったときです。

見ておきたい物差しは3つです。クラウドの粗利率が65%あたりで下げ止まるか? 受注残の伸びが、OpenAIを除いても続くか? 減価償却の伸びを、本業の現金の伸びが上回り続けるか?

まとめ

マイクロソフトは売上も利益も伸びていますが、約6万人に退職を募り、お金をAIの設備に向けています。今回の決算では、アジュールが48%伸び、設備投資は過去最大でした。

いちばん伝えたいのは、マイクロソフトをAIの勝者ではなく、AIの「関所」として見ることです。次の決算でも、まず見るのはクラウドの粗利率と、減価償却の伸びです。数字の流れや、ハワイから話した空気感は、動画で見ていただくとより深く分かると思います。

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