10月20日、SpaceXが上場して2回目の決算を発表しました。売上はウォール街の予想を大きく超え、株価は翌日に約8%上がったと報じられています。明日の株価ではなく、5年後・10年後のSpaceXがどうなっているのか? 決算の数字から考えます。
この記事の結論
結論を先に3つお伝えします。1つ目。SpaceXは、売上では、もうAIの会社です。売上の52%がAIの事業でした。
2つ目。ただし、利益を稼いでいるのは、今もスターリンクです。
3つ目。分かれ目は、AIへの巨額の投資が、自分の現金で回るようになるかどうかです。最後に、SpaceXの5年後・10年後を見る3つの物差しをお話しします。
予想を大きく超えた決算
7月から9月の売上は146億ドルで、前の年より161%増えました。4月から6月は78億ドルでしたから、3か月でほぼ倍です。市場の予想は約127億ドルだったと報じられています。
純利益は44億ドルで、上場してから初めての黒字です。ただし、そのうち約16億ドルは利息や税金の戻りなど、本業の外から来ています。本業の利益である営業利益は28億ドルです。
売上の半分はAI、その正体は「貸す」商売
売上の52%、76億ドルがAIの事業でした。会社はこの事業を「スーパーインテリジェンス」と呼んでいます。土台は、2月に取り込んだxAIです。1年前のAIの売上は8億ドルでしたから、9倍を超えました。スターリンクは52億ドル、ロケットは18億ドルで、AIが初めてスターリンクを抜きました。
中身の多くは、計算資源を貸す商売です。5月、SpaceXはClaudeを作るアンソロピックとデータセンターを貸す契約を結びました。上場のときの書類によると、料金は月12億5,000万ドルで、2029年5月までの契約です。3か月なら37億5,000万ドルで、AIの売上のほぼ半分にあたります。xAIが自分のために建てた計算機を、よそのAIの会社に貸している。レストランで言えば、自分の厨房をよその料理人に貸すレンタルキッチンです。
xAIは、SpaceXに買われたあと共同創業者が全員去り、モデルを作る人材を失いました。一方でSpaceXは8月、AIがプログラムを書く道具のカーソルを評価額600億ドルで買いました。ただし社員を引き留めるために234億ドル分の株を時間をかけて渡す約束をしていて、7月から9月だけで12億ドルが費用になりました。僕は、xAIはモデルで勝負する会社から、計算資源とアプリで稼ぐ会社に変わりつつあると見ています。
利益の柱は今もスターリンク
会社全体の営業利益28億ドルのうち、24億ドル、約85%がスターリンクの事業です。個人の契約者は1,360万人で、1年で9割近く増えました。企業や政府向けの売上は1年で91%増えています。
ただし、1人あたりの月の売上は69ドルで、1年前の83ドルから下がりました。値段の安い国や安いプランへ広げているためです。それでもスターリンクは、今もSpaceXの「現金製造機」です。
ロケットでは、超大型ロケットのスターシップが初めて地球を回る軌道まで飛び、次の世代の衛星を26基運びました。ただ、研究開発に3か月で12億ドルを使っているため、ロケットの事業の利益はほぼゼロです。
現金を使いすぎ?
7月から9月の設備投資は196億ドルで、売上の146億ドルより大きい額です。そのうち164億ドル、84%がAIです。1月から9月で見ると、本業で入ってきた現金は131億ドル、設備投資は481億ドルでした。
足りない約350億ドルを埋めたのは、6月の上場です。SpaceXは約860億ドルを集めました。9月末の現金と有価証券は約900億ドル、借金は約390億ドルです。しかも10月から12月の設備投資は、350億ドルから400億ドルの見通しと報じられています。今回の約2倍です。
僕は、AIの産業の最大の問いは「投資と売上の溝」だと考えています。SpaceXは、この溝を1社の中に抱えています。アメリカでは、今のSpaceXを「半分建った家」に例える声があります。完成した豪邸を思い描く人もいれば、膨らむ建築費を見る人もいるんです。
5年後・10年後、SpaceXはどうなる?
僕が会社を見るときの物差しは、何本の層を縦に貫いているかと、お客さんの入口を持っているかです。SpaceXはロケット、衛星、計算機、AIのモデル、カーソルというアプリまで縦に持ち、入口はスターリンクの1,360万人とカーソルを使う技術者です。
5年後、AIの売上の中心は計算資源を貸す商売だと僕は見ています。10年後、価値は使う人に近いアプリの側へ移ります。そのとき、カーソルやグロックが人が指名して使う入口になっているか? ここが分かれ目です。
見ておきたい物差しは3つです。1つ目は、本業で入る現金で設備投資をまかなえるようになるか? 2つ目は、AIの売上のうち、貸す商売ではなく自分のアプリの売上がどこまで増えるか? 3つ目は、スターリンクの契約者の数と1人あたりの売上が伸び続けるか? です。
強気の見方と弱気の見方
強気な人たちは、AIの売上が3か月で約3倍になり、足りない計算資源を貸せる側にいることを評価しています。スターリンクという現金製造機があり、上場で集めた現金も手元にあります。ロケットからアプリまで縦に持つ会社は、ほかにありません。
弱気な人たちは、設備投資が売上より大きく、次の3か月はさらに倍になることを心配しています。上場の書類によると、アンソロピックとの契約は最初の3か月が過ぎると、どちらからでも90日前に知らせれば解約できます。減価償却の費用は3か月で36億ドルと1年前の2倍で、GPUが早く古くなれば重荷になります。
そして、マスク氏は議決権の約8割を握っています。長く大きな賭けを続けられる強みであり、賭けを止める人がいない弱みでもあります。
まとめ
SpaceXは、売上の52%をAIが占める会社になりました。ただし、利益を稼いでいるのは今もスターリンクです。SpaceXの問いは、ロケットが飛ぶかではなく、AIへの投資が自分の現金で回るようになるかどうかです。次の決算でも、僕がまず見るのは、売上の伸びではなく設備投資と現金の差です。
動画では、大口のお客さんとの契約や、強気の見立てが崩れる3つの条件まで、さらに詳しくお話ししています。ぜひ動画もご覧いただくと、より深く分かると思います。


