「アマゾンは凋落するのか?」という声が、アメリカで目立っています。ところがクラウドのAWSは、2027年までほぼ売り切れだそうです。10月29日の決算を材料に、5年後・10年後のアマゾンを考えます。
この記事の結論
結論を先に3つお伝えします。1つ目。アマゾンの本当の主役は、通販ではなく、AIの計算を貸すAWSです。
2つ目。10月29日の決算では、AWSは加速し、手元の現金のマイナスは広がりました。
3つ目。分かれ目は、AIの設備が、現金になって戻ってくるかどうかです。最後に、アマゾンの10年を見るための3つの物差しもお伝えします。
「アマゾンは凋落?」と言われる3つの理由
理由の1つ目は、AIの主役に見えないことです。ChatGPTのOpenAIも、クロードのアンソロピックも、外の会社です。アマゾンは、最先端のAIを自分でつくる競争の先頭にはいません。
2つ目はお金の使い方です。AIの設備に使う額は、今年約2,200億ドルの計画です。2月の決算でこの計画が示されると、株価は一時10%近く下がりました。
3つ目は手元の現金です。6月までの1年で手元に残った現金はマイナス76億ドルで、前の年はプラス182億ドルでした。稼ぐ力が落ちたのではなく、使うお金がそれ以上に増えたのです。
さらに、去年10月に約1万4,000人、今年1月に約1万6,000人、本社などで働く人を合わせて約3万人減らしました。アマゾンの歴史で最も大きな削減です。会社は組織の階層を減らすためと説明していますが、アメリカでは「人を減らしたお金をAIに回している」という声も目立ちます。
AWSは、2027年まで売り切れ
では、そのお金は無駄になっているのでしょうか? 10月23日、アンディ・ジャシーCEOは、AWSの計算の力は2027年までほぼ売り切れで、2028年の分もかなり埋まっていると語りました。足りないのは、データセンターの場所と電気とメモリだそうです。
4月から6月のAWSの売上は422億ドルで37%増、営業利益は166億ドルで、アマゾン全体の利益の約6割を占めます。通販の会社に見えて、利益の中心はクラウドなんです。
ただし、売り切れは需要の強さであると同時に、供給の限界でもあります。アメリカでは自前で発電所を建てるAIのデータセンターまで出てきました。AIの計算の力は、お金を出してもすぐには増やせません。
AIをつくる会社ではなく、計算を貸す会社
アマゾンは、自分で最先端のAIをつくる代わりに、AIをつくる会社に計算を貸す道を選びました。その柱が、自社で設計した半導体トレイニアムです。アンソロピックもOpenAIもトレイニアムを使うと約束し、自社の半導体の事業は年換算で250億ドルを超えました。
アマゾンはアンソロピックに出資もしていて、4月から6月の利益には、その出資の値上がり分534億ドルが入っていました。AWSの上ではGPTもクロードも使え、AIの窓口では大企業の支払いが前の年の約7倍になっています。AIの勝者がどこになっても、計算を貸す側はもうかる。ゴールドラッシュで、つるはしを売る形です。
本業も弱っていません。7月から9月には、プライム会員に15億個を超える品物が当日か翌日に届き、買い物を手伝うAIはこの1年で4億人を超える人が使いました。通販で集めた買い物のデータが、広告の強さも支えています。
10月29日の決算で見えた答え
売上は2,019億ドルで12%増、プライムデーの時期のずれを除くと約16%の伸びです。AWSの売上は460億ドルで39%増と、37%からさらに加速し、約5年ぶりの速さになりました。AWSの営業利益は178億ドルで55%増、会社全体の営業利益は281億ドル、売上に対する利益の率は13.9%で過去最高です。
その一方で、3か月の設備投資は773億ドルと前の年の約2.2倍になりました。9月までの1年で手元に残った現金はマイナス424億ドルで、マイナスの幅は3か月で5倍以上に広がっています。ジャシーCEOは、AWSは2027年も2028年も40%を超えて伸びると見込んでいます。
5年後・10年後、アマゾンは勝ち残るか?
ジャシーCEOは、売上1兆ドルの事業はまだ世界に一つもないが、アマゾンには5年から10年でそれが2つ生まれるかもしれない、と語りました。
AIのお金は、電力から半導体、クラウド、モデル、アプリへと8つの層を流れます。アマゾンが主に戦うのは計算を貸す層で、5年後の売上がいちばん大きく、設備のお金もいちばん重い層です。僕は、この層で最後に残るのは下の層まで縦に持つ会社だと見ていて、アマゾンは自社の半導体でその条件をそろえようとしています。すでにAWSと契約している大企業なら、新しい取引を始めずにAIを使い始められるのも強みです。弱いのは、社員が毎日使う仕事のアプリが無いことです。人工衛星のインターネット、アマゾン・レオという芽もあります。
強気の見方は、AWSは売り切れで40%超の伸びが続く見込み、利益の率は過去最高、アンソロピックへの出資はAIの勝者の分け前にもなる、というものです。弱気の見方は、現金のマイナスが広がり、減価償却は3か月で209億ドルに増えた。AIの計算の需要が止まれば設備は重い荷物になり、最先端のAIを持たないので入口を他社に握られる、というものです。
見ておきたい物差しは3つです。AWSの伸びが40%前後を保てるか? AWSの利益の増え方が設備の費用の増え方を上回るか? 手元に残る現金がプラスに戻るか? 逆に、AWSの伸びが2四半期続けて20%台に落ちたとき、設備投資を増やしても現金のマイナスが広がり続けるとき、アンソロピックやOpenAIが計算を大きく移したときは、強気の見立てが崩れる合図です。
まとめ
AWSは2027年まで売り切れで、今回の決算では加速し、利益の率は過去最高になりました。一方で、手元の現金のマイナスは広がりました。
いちばんお伝えしたいのは、アマゾンを通販の会社ではなく、AIの計算を貸す会社として見ることです。次の決算でも、まず見るのはAWSの伸びと、手元に残る現金です。
動画では、通販と広告の強さやアマゾン・レオの話も含めて、ハワイから順を追ってお話ししています。あわせてご覧いただくと、より深く分かると思います。


