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YouTube解説2026年10月15日

ナイキ(NIKE)は終わったのか?株価は最高値から約8割下落、「ナイキ離れ」は10年続く衰退か?

10月1日、ナイキが決算を発表しました。3か月の売上は112億ドルで前の年より4%減り、株価は10月の初めに30ドル台まで下がりました。明日の株価ではなく、5年後・10年後のナイキがどうなっているのか? を、米国株を長期の資産運用として続け、会社の経営もしている僕の立場から考えます。

この記事の結論

結論を先に3つお伝えします。1つ目。ナイキの株価は、2021年の最高値から約8割下がりました。9月には、アメリカの代表的な大企業100社の株価指数、S&P100から外れました。この不調は一時のつまずきではなく、5年かけて積み重なった問題です。

2つ目。いちばんの原因は、ブランドが弱くなったことではありません。お店の棚という「入口」を自分から手放し、その空いた棚を新しいブランドに取られたことです。

3つ目。売上の規模は、今でも世界最大級です。10年で見るべきは株価ではなく、棚と熱が戻るかどうかです。具体的には、ランニングの靴の売れ行き、中国の売上、そして値引きの少ない利益率です。

ナイキに何が起きているのか?

6月から8月の3か月の売上は112億ドルで、前の年より4%減りました。中でも大きいのが中国で、売上は22%減。為替の影響を除くと26%減です。自社の店とネット通販で直接売る分も8%減りました。会社は、今年1年の売上も1桁台の後半で減ると見ています。

1年の売上は、2024年度の514億ドルが最高でした。それが2026年度には464億ドル。2年で約1割減っています。株価は最高値のおよそ179ドルから30ドル台へ。時価総額で見ると、ピークの約2,800億ドルから2,000億ドル以上が消えました。

そして9月21日、ナイキは2008年から入っていたS&P100から外れました。ただし、ダウ平均とS&P500には今も入っています。

原因は「直販に寄せすぎた」こと

いちばん大きな原因は、5年前の戦略の転換です。2020年ごろ、当時の経営陣は「これからは自社のネット通販とお店で、直接お客さんに売る」と決めました。直接売れば、問屋や小売店に払う分の利益が自分のものになります。そのために、長く取引してきた靴の専門店や百貨店との取引を大きく減らしました。

ところが、お客さんは思ったほどネットについてきませんでした。売れ残った在庫は値引きで売るしかなく、値引きが続くと、ブランドの格は少しずつ下がっていきます。

僕は、ここがいちばん大事な点だと考えています。お店の棚は、お客さんがブランドと出会う「入口」です。ナイキは、その入口を自分から手放してしまいました。

空いた棚を取ったのは、新しいブランド

ナイキが引いたあとの棚には、別のブランドの靴が並びました。スイスのOnは売上を大きく伸ばし、ランニングの靴で人気のHOKAも伸びています。ドイツのアディダスも勢いを取り戻しました。

9月18日には、サッカーのフランス代表、キリアン・エムバペ選手がナイキからOnに移ると発表されました。子どものころから20年近くナイキと契約していた選手です。スター選手は、ブランドの熱そのものです。ナイキが何十年もかけて築いてきた「憧れ」の一部が、新しいブランドに移り始めている。そう見ることもできます。

新しいCEOの立て直しと、よかった点

2024年10月、ナイキで30年以上販売の現場を歩いてきたエリオット・ヒルさんがCEOになりました。やっていることは大きく3つです。手放した小売店との取引を、もう一度増やす。値引きを減らし、ブランドの格を守る。会社の組織を、ランニング、バスケットボール、サッカーのようなスポーツごとに作り直す。さらに2031年度までに、合わせて約25億ドルの費用を削る計画も出しました。ヒルさん自身も「立て直しは一直線には進まない」と話しています。

暗い話ばかりではありません。今回の利益率は42.8%で、前の年より0.6ポイント上がりました。売上が減る中で利益率が上がったのは、値引きを減らす方針が数字に出始めているということです。純利益は7億ドル余りで前の年とほぼ同じ。手元の現金と短期の運用は約84億ドルあり、すぐに資金に困る会社ではありません。

僕が会社を長い目で見るときの物差しは2つです。入口を持っているか? そして、経営者が失敗を認めて直す速さです。ナイキは直販に寄せすぎたことを認め、はっきり舵を切りました。この点は前向きに見ています。ただし、方向を変えることと結果が出ることは別で、数字に表れるまでには何年もかかります。

5年後・10年後のナイキ

5年後、2031年ごろに問われるのは、棚が戻るかどうかです。小売店から見れば、ナイキは「一度自分たちを切った相手」でもあり、一度ほかのブランドに渡った棚を取り戻すのは簡単ではありません。一方で、ナイキの靴を置きたい店は今も世界中にあります。約束どおり値引きを減らし、新しい靴でお客さんを呼べれば、5年で売上を前の水準に戻すことは、ありえない話ではありません。

10年後、2036年ごろに問われるのは、熱が戻るかどうかです。ナイキの本当の財産は工場ではなく、「あの選手が履いている靴を履きたい」という憧れです。それは次の世代のスター選手と新しい靴で、年単位で積み上げて作り直すしかありません。

だから僕は、ナイキを「終わったビジネス」とも「すぐに戻るブランド」とも見ていません。10年かけて憧れを作り直せるかどうかの途中にいる会社だと見ています。

強気の見方と弱気の見方

強気の見方。売上は今も1年で約460億ドル、世界最大級のスポーツブランドです。値引きを減らして利益率は上がり始め、問屋向けの売上は自社の直販より持ちこたえています。手元の現金も厚く、費用を削る計画も出ています。

弱気の見方。中国の売上は為替を除いて26%減で、回復の形はまだ見えていません。会社自身が今年の売上は1桁台の後半で減ると見ています。Onやアディダスに渡った棚と選手は簡単には戻らず、関税も利益を押し下げる要因として残っています。

僕の見立てが崩れるのは、値引きを減らしているのに利益率が再び下がり始めたとき、中国の売上の減り方がさらに大きくなったとき、看板選手の流出が続いたときです。逆に、小売店への売上が伸び、ランニングの靴で勢いが戻れば、立て直しは本物に近づきます。どちらに転ぶかは、今日の時点では誰にも分かりません。

まとめ

ナイキの株価は最高値から約8割下がり、S&P100からも外れました。原因はブランドそのものよりも、直販に寄せすぎて、お店の棚という入口を手放したことにあります。それでも売上は今も世界最大級で、新しいCEOのもとで利益率は少し上がり始めました。

ただし、事業が立て直っても、株価が戻ることが約束されるわけではありません。5年後・10年後の目で見るときに大事なのは、今日の株価ではなく、棚と憧れが戻るかどうかです。

動画では、ナイキを見る2つの物差しや、見立てが崩れる条件を、僕自身の言葉でさらに詳しくお話ししています。あわせてご覧いただくと、より深く分かると思います。

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