10月13日の発表会で、アップルはついに「家」に本気で乗り出しました。スマートホームの新製品を一度に4つ出し、アメリカでの評価ははっきり分かれています。その反応を材料に、5年後・10年後のアップルの稼ぎがどうなるのか? を、米国株を長期の資産運用として続け、会社の経営もしている僕の立場から考えます。
この記事の結論
結論を先に3つお伝えします。1つ目。主役のHomeViewは、顔で家族を見分ける機能が高く評価され、「すごい」と好評です。
2つ目。新しいApple TV 4Kには「299ドルは高すぎる」という不満が出ていて、「今のもので十分」と買い替えを見送る声が多く出ています。
3つ目。製品はそろいました。でも、アップルが本当に稼ぐのは、これから育つSiri AIです。お金が入るのは、製品を売ったあと、AIを使ってもらってからです。
発表された4つの新製品
発表されたのは、画面つきのスマートスピーカーHomeView、LGなどと組んだ防犯カメラや玄関の鍵などの機器Apple Home Collection、テレビにつなぐ新しいApple TV 4K、小型スピーカーのHomePod mini 2の4つです。
4つに共通するのが、アップルの新しいAI、Siri AIです。9月にiPhoneで始まった新しいSiriを、家の中じゅうに広げる狙いです。アメリカでは「魅力は大きいが、まだ分からない点も多い」という評価が目立ちます。
HomeViewが「すごい」と言われる理由
HomeViewは、アップルにとってまったく新しい種類の製品です。7インチの画面とスピーカーが一体になっていて、リビングやキッチンに置いて使います。いちばんの特長は、最大6人まで顔で家族を見分け、一人ひとりに専用のホーム画面を出すことです。お父さんが前に立てばお父さんの予定が、子どもが前に立てば子どもの画面に切り替わります。
自分のメッセージを家族に見られないか? という心配には、条件をそろえて答えています。個人の情報が出るのは、本人の顔に加えて、本人のiPhoneが近くにあり、そのロックを最近解除しているときだけです。カメラとマイクの情報は、アップル自身も見られない形で処理すると説明しています。他社より安心だという評価がある一方、「使ってみるまでは分からない」という慎重な声もあります。
キッチンではレシピを手順ごとに表示し、声でタイマーをかけられます。防犯カメラは最大9台の映像を同時に映せます。そして値段は299ドル。「思ったより安い」と受け止められたことが、評価が高い一番の理由です。
カメラの月額がいらない、Apple Home Collection
アップルは防犯カメラや玄関の鍵を、自社だけでは作りませんでした。韓国のLG、フランスのシュナイダーエレクトリックと組んだのです。これはアップルにとって大きな方針の転換です。iPhoneをかざすだけで設定でき、LGのアプリを入れる必要もありません。
僕がいちばん大事だと考えているのは、カメラの映像がアップルのiCloud+という月額サービスに保存される点です。カメラの会社に別の月額料金を払う必要はなく、アメリカでは歓迎されています。そのかわり、台数が増えるほどiCloud+の上のプランが必要になります。アップルから見ると、家のカメラがiCloud+に入ってもらう入口になるわけです。
Apple TV 4Kは「299ドルは高すぎ」
ところが、Apple TV 4Kになると評価が一変します。テレビにつなぐ動画用の機器は、ほかの会社からもっと安いものが出ており、これまで使ってきた人ほど値上がりを強く感じています。新しいA19チップと、離れた声を拾うマイク3つを載せ、話しかけて操作できるようになりました。リモコンをiPhoneで探せる機能は「やっと付いた」と喜ばれています。
それでも買い替えが見送られる理由は2つです。1つは、Siri AIのベータ版が第2世代以降の今のApple TV 4Kにも来ること。もう1つは、使う人の多くが話しかけたいのではなく、動画を見たいことです。149ドルのHomePod mini 2も、10月30日の発売時点ではSiri AIが入っておらず、将来の更新で対応する予定です。どの製品も「製品が先、AIは後から」です。
5年後・10年後のアップル
4月から6月の決算で、スマートホーム製品が入る部門は79億ドル、全体の7%ほどです。スマートホーム製品がすぐに売上を大きく動かすことは考えにくいです。
効いてくるのはサービスです。売上から原価を引いて残る割合が、サービスはおよそ76%。製品のおよそ40%より、ずっと稼ぐ力が強い事業です。Siri AIのサーバーで動く機能には1日の上限があり、上限を増やす分は将来有料にすると説明されています。
5年後、2031年ごろに見るのは、iCloud+の上のプランやSiri AIの有料の機能を使う人が増えたか? です。10年後、2036年ごろの分かれ目は、家の中で毎日話しかける相手がSiriなのか、AlexaやGeminiなのか? です。ここは正直に言って、今は分かりません。
強気と弱気、そして見立てが崩れる条件
強気の見方です。アップルには20億台を超える端末という入口があります。家族を見分け、データをアップル自身も見られない形で守る。家の中では、この安心が選ばれる理由になります。
弱気の見方です。アマゾンはAlexa+をプライム会員なら追加の料金なしにしました。アップルの製品は値段が高く、Siri AIもまだベータ版です。Apple TVのように買い替えを見送られる製品もあります。
僕の見立てが崩れるのは、話しかける相手にAlexaやGeminiが選ばれ続けたとき、サービスの売上の伸びがはっきり鈍り始めたとき、Siri AIがベータのまま有料の機能が育たないとき、の3つです。
まとめ
アメリカの評価は、HomeViewは「すごい」、Apple TVは「高すぎる」です。ただ、どちらも製品がそろった段階で、AIはこれからです。事業が伸びても、株価の上昇が約束されるわけではありません。
アップルが、家の中で毎日話しかけられる相手になれるのか? そして、それがサービスの売上に表れるのか? 僕が10年見続けるのは、そこです。動画では、各製品の反応をもう少し詳しくお話ししています。あわせてご覧いただくと、より深く分かると思います。


