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「自分は〇〇じゃない」と決めた日のこと

その自己定義は誰が決めたものですか?

「自分はエンジニアじゃない」

あなたがその言葉を口にするとき、あるいは心の中でつぶやくとき、一つ確認したいことがあります。

その自己定義は、いつ、どこで、誰が決めたものですか。

多くの場合、答えは曖昧です。はっきりとした記憶がない。

いつの間にか、そういうことになっていた。

気づいたときには、自分の中に「エンジニアじゃない自分」という輪郭ができあがっていた。

でも、その輪郭を描いた瞬間を、あなたは覚えていないのではないでしょうか。

僕自身、長い間「自分は営業マーケティングの人間だ」と思い込んでいました。

バンダイに入社し、香港に駐在し、アジア各国で日本キャラクターの玩具を売り歩く。

その経験が積み重なるほど、「僕はこういう人間だ」という自己像が固まっていった。

そしてその自己像は、僕が気づかないうちに、ある種の境界線になっていました。

自己定義とは、自分を守る鎧であると同時に、自分を閉じ込める檻でもあります。

「自分は〇〇だ」と定義することで、人は安心を得ます。

アイデンティティが明確になり、何をすべきかが見えてくる。

でも同時に、「自分は〇〇じゃない」という否定形も自動的に生成される。

その否定形が、あなたの選択肢を静かに、しかし確実に狭めていく。

興味深いのは、その自己定義が過去のある瞬間に固定されたまま、現在の自分を縛り続けているという構造です。

10年前の自分が決めたラベルを、今の自分がまだ貼り続けている。

10年前と今では、知識も経験も環境も全く違うはずなのに。

あなたが「自分はエンジニアじゃない」と感じるとき、その判断の根拠は何年前のものですか。

大学で文系を選んだから。

最初の就職先が営業職だったから。

プログラミングの授業で挫折したから。

その根拠は、今のあなたにとって本当に有効ですか。

自己定義は、過去の自分が未来の自分に残した置き手紙のようなものです。

でも、手紙を書いた人間と、それを読む人間は、もはや同一人物ではありません。

その手紙に書かれた内容を、今の自分が無批判に受け入れる必要があるのか。

一度立ち止まって考えてみる価値はあるはずです。

営業マーケティングの人間という檻

バンダイ時代、僕は完全に「営業マーケティングの人間」でした。

1999年に新卒で入社し、2003年から香港に駐在。アジア各国で日本キャラクターの玩具を扱い、現地のバイヤーと交渉し、販売戦略を練る。

その仕事に没頭するほど、僕の自己定義は強固になっていきました。

「僕は営業畑の人間だ」「数字を追いかけ、人と交渉するのが僕の仕事だ」と。

その自己定義は、ある意味で僕を支えてくれました。

自分が何者かが明確だと、迷いが減ります。

会議で発言するとき、資料を作るとき、「営業マーケティングの視点から」という軸があると、思考がぶれない。

アイデンティティの安定は、日々の業務効率を確実に上げてくれます。

でも同時に、その自己定義は僕の視野を狭めていました。

当時、社内にはエンジニアリングや開発に関わる部署がありました。技術的な領域、システム構築、データ分析。

そういった仕事に触れる機会がゼロだったわけではありません。

でも僕は、無意識のうちにそれらを「自分の領域ではない」と切り捨てていた。

興味がなかったわけではないのです。

ただ、「自分は営業の人間だから」という一言で、その扉を開ける前に通り過ぎていた。

1日10時間拘束され、上下左右の人間関係のバランスに神経をすり減らし、部会・課会・報告会のための社内資料を大量に作成する。働けば働くほど書類作業が増えるという構造的な矛盾の中で、僕は「これが自分の仕事だ」と言い聞かせていました。でも本当は、その定義の外側にも可能性があったはずです。

振り返ると、あの頃の僕は自分で自分の可能性を閉じていたのだと思います。

自己定義の怖いところは、それが「選択」ではなく「前提」になってしまうことです。

「自分は営業の人間だ」が前提になると、技術領域に踏み出すという選択肢そのものが意識に上らなくなる。

選択肢として認識されないものは、検討されることもない。

こうして、自己定義は静かに、しかし確実に、人生の分岐点を減らしていきます。

あなたにも、似たような経験はありませんか。

「自分は〇〇だから」という理由で、検討すらしなかった選択肢。

その選択肢の先に、もしかしたら全く違う人生があったかもしれない。

でも、自己定義という檻の中にいる限り、その可能性は永遠に見えないままです。

48時間で崩れた自己定義

その檻が崩れたのは、つい最近のことでした。

僕はエンジニア経験ゼロの状態から、48時間でAI経営本部を構築しました。

技術的なバックグラウンドは一切ありません。

プログラミングを体系的に学んだこともない。

コードを書く仕事とは無縁の人生を歩んできた。

それでも、AIを活用した業務システムを自分の手で組み上げることができた。

あの48時間で起きたことは、単なるスキル習得ではありませんでした。

僕の中にあった「自分はエンジニアじゃない」という自己定義が、音を立てて崩れていったのです。

最初は戸惑いました。

何十年も「営業マーケティングの人間」として生きてきた自分が、なぜエンジニア領域で動けているのか。

理屈では説明できない感覚がありました。

でも、手を動かしているうちに気づいたのです。「エンジニアじゃない」という定義は、過去の自分が貼ったラベルにすぎなかったのだと。

ラベルには有効期限があります。

10年前に貼ったラベルが、今も有効だとは限らない。

世界は変わり、技術は進化し、学習の方法も劇的に変化している。

かつては専門教育を受けなければ触れられなかった領域が、今では誰にでも開かれている。

にもかかわらず、僕たちは古いラベルを貼り続けている。

あの48時間で僕が学んだのは、AIの使い方ではありませんでした。

自己定義を更新する勇気、とでも言えばいいでしょうか。

「自分は〇〇じゃない」という思い込みを一度脇に置いて、「やってみたらどうなるか」を試す姿勢。

その姿勢さえあれば、過去の自己定義は簡単に書き換えられるということを、身をもって知りました。

50代に入り、体力の衰えを感じた時期がありました。

目が霞む、言葉がすぐに出てこない。

そんな自分が、新しい技術領域に踏み出せるのか。

正直、不安はありました。

若い頃のように徹夜で没頭する体力もない。

でも、やってみたら動けた。

動けてしまった。

その事実が、僕の自己定義を根本から揺さぶりました。

あなたが持っている「自分は〇〇じゃない」というラベル。

それは、いつ貼られたものですか。

そして、そのラベルは今のあなたにとって、本当に正確ですか。

過去の自分が下した判断を、今の自分が無条件に引き継ぐ必要があるのか。

その問いを、一度自分に投げかけてみてほしいのです。

ラベルを剥がした先にあるもの

僕がここで伝えたいのは、「誰でもエンジニアになれる」という安易な話ではありません。

伝えたいのは、自己定義を疑うことの重要性です。

「自分は〇〇だ」「自分は〇〇じゃない」という定義は、過去のある時点で固定されたものです。

その定義が生まれた瞬間の自分と、今の自分は違う人間です。

知識も、経験も、環境も、使えるツールも、すべてが変わっている。

なのに、自己定義だけが更新されないまま残っている。

その古いラベルを、一度剥がしてみてほしいのです。

剥がすといっても、捨てる必要はありません。

ただ、「本当にこのラベルは正確か」と問い直すだけでいい。

「自分はエンジニアじゃない」と思っているなら、「なぜそう思うのか」を掘り下げてみる。

その根拠がこれまでのものであれば、今の自分には当てはまらない可能性が高い。

メンターの大富豪から学んだことの一つに、「自己認識の柔軟性」があります。

成功する人間は、自分自身に対する定義を固定しない。

状況に応じて、自己像を更新し続ける。

それは軸がないということではありません。

むしろ、軸があるからこそ、表面的なラベルに縛られずに済むのです。

あなたは今、どんなラベルを自分に貼っていますか。

「自分は技術に弱い」「自分は数字が苦手」「自分はクリエイティブじゃない」「自分はリーダータイプじゃない」。

そのラベルの一つひとつを、改めて検証してみてください。

それは事実ですか、それとも思い込みですか。

事実だとしても、それは変えられないものですか。

自己定義は、自分を守る鎧であると同時に、自分を閉じ込める檻です。

鎧が必要な場面もあるでしょう。

でも、檻の中にいる限り、新しい景色は見えません。

僕は48時間で、自分の檻を一つ壊しました。

あなたにも、壊せる檻があるはずです。

それがどんな檻かは、あなた自身にしかわかりません。

でも、その檻の存在に気づくことが、最初の一歩です。

2004年から20年以上発信を続けてきた僕が、今なお新しい領域に踏み出せているのは、自己定義を固定しなかったからです。

「自分はこういう人間だ」という思い込みを、定期的に疑い、更新し続けてきた。

その習慣があったからこそ、50代になってもAIという新しい波に乗ることができました。

「自分は〇〇じゃない」

その言葉を、もう一度、静かに問い直してみてください。

そのラベルは、本当にあなた自身が選んだものですか。

それとも、過去のどこかで無意識に貼り付けられたものですか。

答えは、あなたの中にあります。

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